組み立て記事がようやく4記事目なのですが、今回の温泉天国さんのバニーしずるは想像していた以上に難易度の高いキットでした。
制作にかかった期間は約3ヶ月です。何がそんなに難しかったのかを端的に言いますと、
・微細気泡が目立つ場所にある
→ドボンするとそのたびに表面処理が必要だった
・スーツと上半身が分離されていないため表面処理&塗り分けがシビア
→左脇付近が特に難所
・右手は分割されているが左手は分割されていない
→左腕内側は死角なので完成前に塗装できてないことに気づいた
・網タイツ表現のためのチュール貼り付けが思ったより難しい
→ほぼ一発勝負。丁寧にやらないとチュールが破れたり洗濯バサミで擦れて塗装が剥げる、片足2~3時間はかかる
・スーツや耳、ネクタイ、ヒールのテカテカ光沢にはウレタン塗装が必須
→こちらも一発勝負。完全硬化後もツールウォッシャーで剥がせるが下地が傷みやすい
・目の縦幅が左右で若干異なるため普通に目を描くと違和感が出る
→塗装で調整が必要
などなど…
もちろん多くのキットをこなしてきた方であれば難なく制作可能と思われますが、私のようなガレキ初心者には思ったよりも難易度が高かったですが、その分どう処理するか?や地味なミスのごまかし方などの発見もありいい経験になりました。もちろん、何度もドボンするハメになったのは言うまでもありません…。
温泉天国さんはご自身のブログで通販もされているため、キットの入手はイベントに限りませんし、わざわざ中古やオークションサイトで探す必要はありません。
キット自体はどれも1/7スケール程度なのですが5000~6000円程です。昨今の完成品やキット相場と比較しても非常に安価ですので、ガレキ制作のいい練習ができると思います(先述の通り難易度高めのものもありますが。)
オリジナルのしずるシリーズは今後も続投されると思われますので、新作旧作を購入したいという方は、温泉天国さんのブログやツイッターをチェックしておくとよいでしょう。
今回はGW前に購入したバニーしずるの制作記事となります。
パーツチェック&表面処理
まずはパーツチェックです。
きちんとパーツが揃っていることを確認しましょう。もしない場合はディーラーさんに連絡を。温泉天国さんの場合はオリジナルかつ通販対応されていますので期限が過ぎたら申請不可、といったことはないはず。
次にバリや気泡チェックを行いますが、この時点ではざっと見るだけでいいです。本チェックはランナー跡などを削り取ってから行います。
ルーターなどを使ってサクサクと削り、表面を整えるとこのように微細気泡がびっしりと…。私のキットはふくらはぎ付近や両肩、両腕、襟に気泡が見られました。あとでこの気泡を埋めます。
その前にまずはパーツの離型剤をしっかりと落としましょう。このキットは離型剤がかなり強く残っていたため、離型剤落としの作業を適当にやると後々泣きます。泣きました。
特に胸部中央や背中のくぼみあたりは離型剤が残りやすいため、念入りに落とすのが無難。中性洗剤に一晩漬けておき、その後クレンザーを付けて歯ブラシで磨くのが基本ですが、それでも割と残っているためヤスリでしっかり磨いておくのも大事です。
洗浄できたらしっかりと乾かして気泡を埋めます。
気泡埋めにはシアノンにベビーパウダーを混ぜ、ちょっと固めのパテくらいの柔らかさにして気泡にヤスリで刷り込んでいきます。
埋めてもある程度気泡の跡は残りますが、ホワイトサフを使えばかなり目立たなくなりますよ。部分的に使うだけですからサフレス塗装でもほぼ影響しません。なのでホワイトサフは積極的に使いたいところ。
全部気泡が埋められた、と思ったら右の写真のように残っていることもあります。気泡チェックは逆光で行うとやりやすいですね。
仮組み&台座作り
気泡埋めが完了したら適当に軸打ちして仮組みします。軸打は両足と胴を隙間なく合わせるのはやや難しいですが、その隙間に網タイツ用のチュールが入るとわからなくなるので多少の隙間は気にしなくてよいです。
バニー耳は軸打せず木工ボンドでつけてやるのがおすすめ。
仮組みが問題なければ台座を作ります。
このバニーしずるはベースがなくてもギリギリ自立しますが、ちょっと揺れたら倒れるというのは困るので作っておくほうが無難。
ベースは1mm程度のアクリル板をサークルカッターでカットするだけ。今回は2mmの板を使っていますが、カッターの刃が2mm対応のものではなかったため力技でくり抜くことになりました。
適当に足の幅程度の円盤が作れればそれで良いです。
切り出したアクリル円盤にヒールを軸打ちして台座作成完了。
ぐるぐると向きを変えても倒れない程度の強度であれば十分です。
肌塗装&髪塗装&スーツ塗装
次にようやく塗装にはいっていきます。
プライマー、ホワイトサフ、ラッカー塗装、という順番で行いますので、毎度のことですがマスキングの塗り分けで失敗すると全ての作業がやり直しとなります。
気泡跡があった部分にはホワイトサフをしっかりと吹き付けて見えないようにします。ホワイトサフは濃すぎると粉吹き状態になってしまうので、ある程度溶剤で薄めエアブラシを低圧にして焦らずゆっくり塗装するのがコツ。一度に同じ場所に吹き付けると垂れ跡になったりするので、若干範囲広めに吹き付ける必要があります。
ホワイトサフで気泡後が隠せたら、次は肌の色を塗っていきます。
今回は美白系の肌にしたかったので、ガイアのサフレスフレッシュオレンジ+サフレスピンクを混ぜたものを薄く塗り、その上にノーツフレッシュとノーツフレッシュホワイトを混ぜ、溶剤でかなり薄めた肌色を重ねました。
バストトップはエナメルのクリアレッドをのせます。スーツを単色で塗装する場合は意味がないのですが、若干透けさせたい場合は色を付けておくといいかも。
次にスーツの塗装です。ボディとスーツが分割されていないため、マスキングはかなり丁寧に行ったほうが良いです。ワキ部分は特に注意。(この部分で何度も失敗してドボンすることになりました…)
ラッカー黒でスーツやヒール、ネクタイなどのパーツが塗装できたらその上にウレタンで塗装します。
ウレタンクリアで塗装する理由ですが、ラッカークリアでは出せない光沢が表現できるため。ラッカークリアだと何度も塗り重ねが必要ですが、ウレタンだと一発でヌルヌルのツヤが出せます。一発勝負かつ半乾きになったタイミングで肌とスーツの境目のマスキングを剥がす必要があるため難易度は高いですが。
なので、ウレタンで塗装する場合は半乾きでもすぐにマスキングを剥がしてドライブースに戻せるようなマスキングを行う必要があります。
ウレタンが半乾き状態でマスキングを剥がさなければならない理由は、乾いてから剥がすと境界線がガタガタになってしまうため。なめらかな境界線にするには半乾きで剥がすのが必須なのです。
また、ウレタン塗装はツールクリーナーに2時間ほど浸けると剥がせますが、ラッカーよりもかなり強度があるため、剥がす作業で下地がほぼ100%荒れます。
もちろん今回のスーツのようなものなら、小さな傷くらいなら再度ウレタン塗装することでで十分隠せる(ウレタン塗装は肉痩せしない)のあまりで気にしなくてよいのですが。
話がそれましたが、今回は作例通り黒スーツにしました。赤でも紫でも好きな色にすれば良いと思います。
今回ムダに余っていたハイパークロームのウレタンクリアを使いました。
基本的にはフィニッシャーズのウレタンクリアなどを使えば大丈夫です。
ウレタン塗装は硬化に時間がかかるため、一晩はドライブースに放置します。硬化すると右の写真のようにかなりテカテカになります。この光沢はラッカークリアでは出ないので、難易度がかなり高いもののチャレンジしてみる価値はあると思います。
カフスにはダイヤカットストーンを仮設置してみます(カフスもあとで塗装するため)。サイズが大きすぎたり小さすぎると微妙なので、複数サイズ、複数カラーが同梱されているものを購入するといいですね。
この状態で仮組みしてみました。まあこんなもんかという具合ですが、スーツの黒が濃すぎたのでこの塗装はドボンとなりました。好みの問題なので、ムリはしなくてもいいと思います。
そしてドボンして再度肌塗装し直しました。硬化したウレタンを剥がすのはかなり大変なのでやる気がだだ下がりになりますが、時間を見つけて作業しました。
気分転換に先に髪を塗装します。作例では黒髪でしたがあえてブラウンにしました。
最初にナチュラルブラウンを薄めて吹付けます。ハイライトは後から塗るのは面倒くさいので、ハイライト部分は薄めに、毛先は濃い目に塗っていきます。
真ん中写真のようにうっすらブラウンを乗せたら、薄めたブラックを重ねます。
すると左写真のように落ち着いたブラウンになりますので、つや消しを吹いて完了。
カチューシャ部分はウレタン塗装前に塗ります。
次にカフスを塗装します。そのままレジンの白色でもいいのですが、多少深みを出すため適当にブルーとレッドを混ぜて紫を作り、シャドーとしました。吹きすぎるとものすごく紫になってしまうため、圧低めでカフスのフチをなぞるように吹くと右側カフスのようになりました。
これだと残念なシャドーなのですが、上から薄めたホワイトを吹くことで自然なシャドー(左)になります
両腕、襟の塗装ができたらダイヤカットストーンをカフスに木工ボンドなどで接着し、爪の先を極細筆などで塗っておきます。エナメル塗料だと光沢もでていい感じに。
色々すっ飛ばしますが、再度スーツを塗装しました。
バニースーツ透け塗装の順番ですが、肌色、つや消し、バストトップ(エナメル)、ラッカー黒、ウレタンクリア、となります。
バストトップがエナメルなのは色がはみ出したときに修正するため。ラッカーで塗ってしまうとやり直しできず、その時点で全て台無しになってしまうためです。
エナメルの上にラッカー、ウレタンと乗せていきますが、ラッカー黒はかなり圧低めにしてフチ部分を濃いめ、透けさせたいところを最後にうっすら吹きかける程度で十分です。圧低めかつ溶剤を飛ばしながらうっすら塗るとエナメル塗装が落ちることはありません。
ウレタンクリアはそこそこ勢いよく吹き付けますが、塗装が溶けたりはしませんでした。
黒のはみ出しはドボン対象ですが、スーツの縁が塗れていない程度であればエナメル黒を極細筆でちょんちょんするだけで修正可能。
顔の塗装
次は面相を整えていきますが、最初に失敗例を2つ。
アイペイントが久しぶりすぎたので思いっきり失敗しました。どちらもコレジャナイ感しかないので、あえなくドボンとなりました。
今まで目の輪郭などはみ出したところは綿棒の尖ったやつで直していましたが、普通に極細筆で修正したほうがラクかつキレイな輪郭にできるとこのタイミングで気づきました。
なので、極細筆は描く用と修正用の2本を用意しておくのが望ましいですね。
というわけで妥協できたアイペイントが以下です。
ラッカークリアでエナメルを保護しながらの作業になります。
ラッカークリアが乾いて次の作業ができるまでの目安ですが、ドライブースに入れる場合だと薄目に吹いて概ね10分~15分程度でした。最低でも10分は乾かさないと触ったときに指紋が付いて台無しになりますので注意しましょう。
目のくぼみはマスキングコートで肌色に塗ってしまわないように保護し、アイペイントのときに剥がします。
最初に目の上側に水色のシャドーをうっすらと引き、ラッカークリアでセーブ。
乾いたらクリアオレンジで目の輪郭を書きます。クリアオレンジは別に書かなくてもいいですが、ある方が自然なシャドーになりやすいようです。
ここまでできたらラッカークリアでセーブ。
そしてクリアオレンジの上に濃い目のブラウンで目の輪郭と眉毛を追加します。そしてラッカークリアでセーブ。
次に目のグラデを塗りますので、目の輪郭に沿ってマスキングを行います。
目のグラデはクリアオレンジを先に塗り、次にブラックを上側に塗ります。勢い余って吹きすぎるとグラデにならないので注意。できたらセーブです。
次に、さらに目の内側の輪郭をブラウンで引き、下側にハイライトとなるホワイトに若干ブラウンを混ぜたものを半月型に乗せていきます。
最後にホワイトでハイライトを乗せて終わり。
ここは一つ一つの作業でセーブした方が確実ですが、今回は一気にまとめて行いました。
アイペイントが完了したらラッカークリアでセーブします。そのあと全体につや消しを吹いてチークを塗れば完了ですが、今回も目の光沢は残したかったのでつや消し前に目をマスキングコートで保護。つや消し後に剥がすと潤いのあるアイペイントとなります。
これで概ね完成ですが、最後に網タイツ表現のためにチュールを足に貼り付けていきます。人によってはタイツ無しでも良いかもしれませんが、やはりタイツがある方が完成度が高まるので貼ったほうが良いと思います。
網タイツ(チュール生地)の貼り付け
ちなみに、網タイツの貼り付け方の詳細はうさPハウスさんのHPに詳しく掲載されていますのでそちらを参照されると良いと思います。
作業の途中で洗濯バサミで塗装をこすってしまい色が剥がれたり、うまくチュールが貼れなかったり、貼れたと思ったら剥がれてきたり、長さが足りなかったり、長さが足りなくてやり直そうとチュールを剥がしたら塗装まで持っていかれたり…と、思いのほか難しいのがチュール張りの作業です。
焦って作業すると確実に失敗するので、時間があるときにのんびり作業したほうがうまくいきやすいです。ちなみに私はチュール張りに片足2~3時間程度(ドボンからの再塗装→再貼付け含めて)かかってしまいました…。
ちなみに、失敗しすぎて付属のチュールが無くなった場合は手芸ショップなどに行くことで購入できます。ネットショップだと送料がかかりますが、手芸店購入だと送料なしですし、モチベの落ちないうちにすぐに作業に取りかかれるためおすすめ。
問題なくスムーズに進めば、片足1時間程度で終わるかと思います。
まずはバックシームを作成します。バックシームは網タイツの縫い目でできた縦ラインのことですね。直接脚パーツを塗装する方法と黒く塗装したマスキングテープを貼り付ける方法の2パターンが考えられますが、手軽にマスキングテープを塗装して貼り付ける方法にしました。
1.5mm幅に細長くカットしたマスキングテープをエナメルまたはラッカー黒で塗装します。貼り付け作業をしているとどうしてもマステの端の黒が肌ににじむので、エナメルのほうが修正がしやすいかも(気休めですが)。
適当にマスキングテープを塗れたら、どの部分にマステを貼ると良いのかを作例などをチェックしつつ考えます。
適当に貼ってみてダメだったら貼り直しというように修正ができるのがマステのいいところ。バランスよくバックシームっぽい線が作れたら、気合を入れてチュールを貼っていきましょう。
このように洗濯バサミを20本ほど活用し、たわみができない程度の張力で貼り付けます。そこに水で薄めた木工ボンドを平筆で塗ります。
塗ったらドライヤーで乾かす、という作業を全体に行います。このときに足の付根や足の裏部分まで貼り付けておくと後の作業が楽になります。
半分貼り付けられたら余分なところをハサミやニッパなどでカットし、もう半分を貼り付けます。
チュールは割と形状を記憶してくれるので、ボンドで貼り付けたあとはボディやヒールにセットしておくことでしっかり型が残って剥がれにくくなります。
片側ができたらこんな感じ。この要領でもう片足にもチュールを貼り付けていきます。
そして完成したのがこちら。
かなり時間がかかりましたが、なんとか貼り付けられて一息つきました…。
余談なのですが、この木工ボンドでチュールを貼り付けて網タイツ表現にするというのはガレキ界隈独特の方法で、FREEingなどバニー専門(?)のメーカーだとフィギュア用の網タイツをわざわざ縫製して履かせています。
完成品の網タイツは木工ボンドなどで貼り付けられているわけではありません。
正直なところ、サイズ別で型紙を作って1/7,1/6スケールのガレキ用網タイツを販売してほしいです。というのも、このチュール張り作業はかなりしんどいんです…。
なので、型紙を作ってチュールでガレキ向け万能網タイツを量産し、500円~1000円くらいで販売してくれれば割と買う人がいると思います。いや、まじで。
チュールの原価はかなり安いし型紙さえ作れればあとはミシンで縫うだけなのですが、誰かやってくれませんかね…。
バニー探偵しずる完成
期間的にも労力的にもムダが多かったのですが、なんとか完成までこぎつけられました。
作ってみて思ったことは、予め計画を立てておいたり、どこでどんなトラブルになるか?を予測しておくというのが大事だなということです。
思いもよらない失敗の連続で何度もドボンして泣きを見ることになりました。なんとか完成したのはよかったとは思うものの、ムダな失敗さえなければもっと早く完成していたはずなんですよね。
ですので、次回作るキットではきちんと計画と起こりそうなトラブルをリストアップし、慎重に制作していきたいなと思います。