最初にハイパークロームAgの記事を書き、トップコートができないよ~と嘆いたのは2017年のことです。
あれからもう2年も経過し新元号に変わるという頃。
そろそろメーカー以外で誰かが体系的かつ具体的である程度の塗装知識を持っているモデラーさんであれば誰でも再現できるようなコンテンツが出てきてるだろう…
と、思っていた時期が私にもありました…。
未だにググってもこのブログの記事が1ページ目に出てくる。
いやダメだろ…。このブログにはちゃんとトップコートできた写真すらなかったし。
そもそもモデラーさん的にウレタン塗料を取り扱うのに結構な壁がある(2液混合だとか、粘度が高いから絶対にマスクと換気が必要だとか、硬化が遅くて全然作業が進まないとか)というのが大きな理由かもしれません。
しかし、ツヤツヤでしっかりと鏡のように反射するクローム塗装にするにはウレタン塗料の特性(ラッカー塗料との違い)を知り、その上で扱えば別に難しいわけではありません。いや、難しいのですが何度も練習してコツを掴めば99.8%くらいはできます。
ということで、ざっくりとハイパークロームAgの塗装工程(プラモデル・模型・ガレージキット向け)をお伝えしますが、あくまでも私が出来た方法ですので、チャレンジされる方はしっかりとテストピースで練習した上でキットの塗装をしましょう。
後日、よりわかりやすい動画を作る予定です。
2019/5/2追記
動画作りました。
ハイパークロームAgの塗装に必要なもの
全て必須です
- ハイパークロームAg
- ウレタンクリア&ウレタン用シンナー
- ベースカラーブラック
- カーボンヒーター
- ドライブース
- スポイト(Ag用、主剤用、硬化剤用で分けて使う)
ハイパークロームAg専用のものでなくともよい。フィニッシャーズのGP2は主剤・硬化剤の割合が2:1なのでハイパークロームAgのウレタンクリアと同じ使い方が可能。
ラッカー黒をウレタンクリアでコートしてもいいけど、率直に言ってもったいない。
輝度低下のないクロームに仕上げるためには必須です。
ファンヒーターやドライヤーで代用しようとすると風でゴミの付着の原因になります。
ゴミ付着防止と寒い時の乾燥に役立つ。
100均とかのでもいいです。主剤、硬化剤用で使い分けてください。
使い回す場合は必ず専用シンナーで洗浄。
※注釈
私の手元にあるハイパークロームAgは2017年時のもので、専用クリアーも主剤2、硬化剤1の割合で使用するタイプです。
塗装ブースと防毒防塵マスクは当然あるものとして想定。
※注意点
ウレタンの塗装には必ずウレタン用のシンナーを使います。なぜラッカーうすめ液を使ってはいけないかというと、ラッカーシンナー(ラッカー薄め液も)にはアルコールが含まれていることがあるため。例えば、クレオスのうすめ液を組成分析した記事によれば、アルコールが含まれているそうです。
詳しいことは調べてもらったほうがよいのですが、ウレタン硬化剤(イソシアネート)とアルコールが反応すると十分な強度が得られず塗膜が非常に脆くなります。
実際にやってみたらわかりますが、塗膜が縮んだりします。なので、ウレタン塗料の希釈には必ずウレタン用のシンナーを使う必要があります。
ハイパークロームAgの塗装工程
ハイパークロームAgをベースからトップコートまで仕上げる前提条件はこんな感じ。
エアブラシのエア圧は絶対に下げない(下げるほどウレタンクリアやAgのミスト粒が大きくなりうまく出来ない)
冬や早朝など気温の低い時には作業しない(ウレタン塗料の硬化が遅くなる)
湿度の高い時期や雨が降った時は作業しない(塗膜が白くにごる「かぶり」が発生しやすくなる)
エアブラシやホース、レギュレーターをよく乾かし水分が1滴も存在しない状態にする(同上)
(↑ぶっちゃけ私は水分や湿度の確認全然してないけど特に問題はなかったです。とりあえず晴れが続く時にやると良い感じ)
とりあえず前提はこんなところです。では塗装工程。
本気で書くとアホみたいに長くなっちゃうので、私が実際に綺麗にクローム塗装できた方法を箇条書きします。
丁寧に説明するのは動画の方でやるのでしばしお待ちを…。
※以下の塗装工程では少しでも素材を指で触れて指紋を付けたりゴミが乗った時点で平滑下地にならなくなるため完全なクローム塗装はできなくなります。
まあ下地のパラ吹きやウェット塗りたてくらいまでは一瞬触れるくらいは大丈夫ですけど、半硬化くらいのときに触ると100%指紋として残りますので気をつけましょう。
1.ラッカーブラック(ガイアEXブラック)で黒下地を作る
ウレタンのブラックを使ったほうが絶対いい。手元にないからこれでやっただけですが、普通にできた。
2.ウレタンクリアを2:1で作り、30%程度の希釈でパラ吹きを数回繰り返して「完全な平滑下地」を作る
検証時は丁寧にやると時間がかかりすぎたので、ホコリやチリとか無視してやったため、ところどころ凸面なのが写真でわかります。
ウレタン塗膜が硬化してから2000番くらいまで磨く方もいるようですが、吹きっぱなしで十分だと思います。
パラ吹き(ミスト吹き)はエア圧MAXで吹き出し量を極力絞ってミストをのせるだけ、という感じです。
パラ吹きでしっかり足付けしてからウェットで平滑な下地を作ります。
3.ドライブース(約40℃)で5時間放置する
30分位経過したら状態を確認し、つやつやで平滑ならOK。梨地、ゆず肌だと失敗なのでもう一度ウレタンクリアを吹く。厚塗りするとディティールが消えるので、できるだけ1回でうまくいくよう練習しておくのが大事。
4.エア圧MAXで吹き出し量を絞りながら、Agを下地に吹き付ける
この時下地のウレタンが指触乾燥していないとAg吹付けの時点で曇ったり、赤茶色のまま銀にならなかったりします。なので、可能な限り下地硬化のために5時間以上はドライブース放置すること。
30秒ほどインターバルをおいて、4回程度塗るとギラつくクロームになります。塗る量が少ないと暗めのメッキという印象に。
写真左が吹き出し量を絞ってふわっふわっとAgを乗せた例。右は一気に吹き付けすぎただめな例。
一気に吹き付けると茶褐色から銀への変化が見られて面白いですが、めっちゃ汚くなります。
5.Agを乾燥させる
今までドライブースに放置で5時間から一晩くらい乾かしてましたが、カーボンヒーターで30cmほどの距離から熱源乾燥させたら30分くらいでトップコートに進めることがわかりました。
6.ウレタンクリアを主剤2、硬化剤1、シンナー希釈100%(全体の量に対して)でパラ吹き
ウレタンとは思えないくらいシャバシャバになりますが、むしろこれでミストをパラパラと吹きかけるのがベストでした。
これでパラ吹きを3回(毎回インターバル20秒、カーボンヒーターで熱源乾燥させる)ほど繰り返して足付けし、吹き出し量を少し増やしてセミウェットでちょっと光沢が見えてくるまで塗り、ヒーターで30秒ほど乾燥させます。
最後に、光沢が出るまでセミウェットで塗ります。最後までドバ吹きはしません。全面に曇りがなくなったら、ヒーターで1分ほど熱源乾燥させて終わり。
吹きっぱなしとの違いはこんなとこです。左1本が吹きっぱなしで後は全部トップコート済み。
若干青みが出ていますが、輝度は下がっておらず曇りもありません。
パラ吹きせずにいきなりウェットで塗ると100%黒ずみます。
また、カーボンヒーターで熱源乾燥せずドライブースだけでやると、曇りも出ずクロームっぽく仕上がるものの、地味に輝度が下がります。
ウェット吹きの前にパラ吹きするのは足付けのためと、銀粒子を定着させて動かなくするため。
以前書いた記事ではシンナー入れすぎるから銀粒子が動くのでは?と考えていたのですが、実際にはシンナーの量が足りず勢いよく吹き付けすぎてしまうことで銀粒子が動き、黒ずんでしまうのだろうと結論づけています。それだけウレタンって吹きにくいんですよ。
なので、シンナーの量は100%くらいでシャバシャバにしてしっかり足付けして銀が動かないようにする。これが最も重要なポイントかなと思います。
トップコート後はラッカーのクリアカラーが乗る
硬化したウレタンはラッカーに侵食されないので、このようにカラーメッキ化することができます。
というわけで、足掛け2年でようやくハイパークロームAgを輝度低下なく曇らせずに再現できる塗装方法にたどり着きました…
いちばん大事なのはこの塗装方法をちゃんと作品作りに活かせるかどうかです。
もしこの記事が参考が参考になって良い作品に仕上がったというようなことがあれば嬉しいので、ツイッターとかでもいいので気軽に教えてください!
一応モーメントに私の格闘記録をまとめているので、そちらも見ていただければなと思います。
プラモ・ガレキ向け-ハイパークロームAgを曇りや輝度低下なくクリアコート(トップコート)する方法