制作関連

タミヤツインファンの吹き返しに我慢できなくなったので塗装ブースを自作しました

タミヤツインファンの吹き返しに我慢できなくなったので塗装ブースを自作しました

※この記事は人によっては全く参考にならないと思われるため、こういう作り方もあるんだな程度で読んでみて下さい

しょっぱなにツインファンと自作ブースの比較動画を貼っておきます。

頑張ればこれくらいは作れるということで…

ガレージキットなどの模型を塗装する人にとってエアブラシと同じかそれ以上に大事なのが塗装ブースですよね。
塗装ブースにも色々なタイプがあるので一概にどれがいいというのは言いづらいのですが、最近は特定の形状(箱型・斜めの整流板・奥付ではなく上部付のファン)で構築されている塗装ブースが多いです。これは恐らくネロブース・互換ブースの功績が大きいと思います。

塗装ブースを自作するに至った経緯

長くなるので結論を先に書きますが、塗装ブースは買える条件が整っているなら買ったほうが絶対いいです。自作だと多少安くてハイスペックなものを作ることも可能ですが、それなりの下調べと必要に応じてDIY工具・金属カットができる環境、それから膨大な労力と時間が必要になりますので…もし自作するなら「製品レベルのものはまず作れない」という前提でやりましょう。DIYってそういうもんです

私が使っていたタミヤのツインファンは結構昔からありますが、付属のシロッコファンが小さいため風量が小さい(斜めに吹くと盛大に吹き返す)うえに騒音も大きい(60dB前後)、そして風量が小さいためにもりもり塗装するとシンナー臭が部屋に充満する(吸いきれない)ため、使えば使うほど(完全初心者の頃から2年ほど使いました)物足りなく感じてきたわけです。

自分でボックスと整流板を増設してみたら多少は改善が見えたものの、そもそもファンの風量が小さいためにそれほどの効果はありませんでした。

この時はなんとかなったかなと思いましたが、結局吹き返しが厳しいんですよね…


↑このような箱型にしていました。箱自体が黒いので光源確保が厳しく、ポリカ板で囲いと整流板を作りLEDバーライトを2本で照らしていました。ポリカ板は透明度が高いので光源確保はしやすいですが溶剤耐性が低いのであまりおすすめしません。

ちなみにツインファンの騒音値はこれくらいです。

風量がそれほど高いわけでもないのに平均で60dBあります。ファン自体が小さいので回転数を上げて風量確保する必要があるため必然的に騒音値も大きくなるものと考えられます。ただ体感で高音域が出ているわけではないと感じるので、そこまでうるさいとは思いません。人の耳は高音域の方が音量が大きいと感じやすいそうです。

というかダクトの口径も小さい(φ70前後?)ですし、さらにはこういう窓に出すためのアタッチメントも付けていましたしそりゃ吸引力も落ちますよねっていう話です。

そういうわけで、新たに塗装ブースを買おうかと思っていたわけです。まず第一候補としては現状最強の塗装ブースであるガットワークスさんのネロブース

出典:https://gattoworks.net/

しかし人気のためか在庫が基本ありません。また、分解不可、重量が8kgと重すぎるために買う以前の問題が発生します。

第二候補は互換屋さんの互換ブース

出典:https://gokanya.net/

こちらはフレームとプラダンで構築されていて自分で組み立てるタイプですね。なので分解可能、重量もネロブースの半分の4kgとかなり軽いです。ただファンはシロッコファンではなくSan Ace120という直径12cmのプロペラファンを採用しているため風量は確保できるものの出力を上げると騒音もそれなりになるようです。(もともとSanAceというファン自体騒音が大きいと一部で知られているようですが)
騒音はこの動画で確認できると思います。風量が増えるにつれてウィーンという高音域の音量が大きくなるのでかなりうるさいと感じます。うるさいと感じるレベルまで風量あげなければいいだけですが。

L字アングルのフレームに3kgのシロッコファンを乗せるわけにはいかない(絶対折れる)ので、風量を上げると騒音はあるものの軽量かつミストも溶剤も吸えるだけの風量が確保できるファンとなると、ある意味これ以外には無いのかもしれません。

環境が許せばネロブースでよいのですが、例えば

・塗装部屋が2階以上の階室(ブースの上げ下げが大変になる)
・塗装ブースを置く場所が重さに耐えきれるか心配
・今後塗装をしなくなるかも?
・不要になったときの処分は?
・パーツの交換
・引っ越し…

などなど、1年後2年後のことを色々考えるとやはり分解できて軽いものが一番いい、交換素材の入手性がよい、安価であるものを選ばざるを得ないという結論になります。そういう意味で互換ブースって最高なんですよね。

ただ、やはりこちらも人気のため購入するのが困難です。私も先日(2020/6/13現在)購入のために通販開始のタイミングを待っていたのですが、販売開始1分で完売となり購入できませんでした。

そして今後は先着順ではなく抽選方式となるため早く注文すれば買える、というわけでもなくなりました。買える可能性は多少上がったのかもしれませんが、それでもやはり買えないかもしれません。個人的にはすぐにでも買い替えたいわけですが、次回販売は月をまたぐために待つことも難しいです。

自作塗装ブースの必要要件と組み立て

長くなりましたがこういう経緯で今回は塗装ブースを自作することにしました。最初に要件を思いついたものや予算からメモします。とりあえず自分の理想をメモしておいて、どうやってそれを実現するかは後から考えればいいです。設計図?そんなものは作らない。
※作るのをおすすめします
必要な要件は以下の通り。

・軽量・移動・処分・パーツ交換が簡単
・広い
・よく吸う
・静か

予算は大体2万5千円、互換ブースと同じくらいですね。私がメモってたのはたったこれだけです。人によってはMDF板とか使って作る人もいますが、MDFは板なのでそこそこの重量があることと、分解組み立てが面倒くさいという理由で除外しました。

結局これらを総合すると互換ブースの風量が強いバージョンがほしい、ということになるんですよね。互換ブースとネロブースの中間みたいなのを作れるのが理想です。

ファンの選定

このタイミングでファンをどれにするかを考えます。できればネロブースと同じ程度の風量(400㎥/h)が欲しいわけですが、プロペラファンだのシロッコファンだの換気扇メーカーだの色々考えるのが面倒くさいので、じゃあもうネロブースminiと同じファン使えばええやん、ということで三菱のBF-14S3(ネロブースminiの販売ページでは風量:300m3/h、騒音値:41dBと記載)を選びました。片吸込形シロッコファンです。

※私が購入したタイプはどうやら別注タイプのようで、基本は弱中強切り替えはついていないっぽいです、すいません…

同じ型を購入したい場合は「BF-14S3」でヤフオクで探してみて下さい。写真の箱に「BF-14S3-DC」と書いてあるやつが私と同じやつです

新古品で7000円くらいでしたが、新品でも8000円くらいです。このファン(BF-14S3-DC)は弱中強の3段切り替えができるようで、強だと風量450㎥/hまで出せるようです。ネロブースminiにセットになっているものはすぐにコンセントに繋いで使えるように配線を変えてあるので300㎥/h固定のようです。

配線について

配線の都合上すぐに使えるのは中風量のみです。以下の結線図を見てもらえばわかりますが、中風量以外の弱と強を使う場合、中から分岐してスイッチを付ける必要があります。

時間が掛かりそうなので当面は中風量のみで使います。
ちなみに風量切り替えは「強と中」または「中と弱」しかできない仕様です。「中」「強」「弱」どちらかの線をつなぐことで「強風量」「弱風量」となるので結構面倒くさいやつでした。

中風量なら赤と白の2本の線を市販のプラグ(100円くらい)につなぐだけなので手軽。資格も不要です(とはいうもののよく調べた上で自己責任でやりましょう、全くわからなければやらないほうが安全)。

一応ストレートシロッコファンBFS-40SCも考えましたが、あのめっちゃデカイファンをドーンと乗せられるブースを作るのも、ファン自体を買うのも予算内では厳しいです。

なのでファンはBF-14S3で決定。このファンはφ150なのでφ150のアルミダクト、ガラリ(排気口)、配管支持金具(ファン側とガラリ側で2本)が必要になります。また、ファンとアルミダクトをつなぐための丸型フランジ(PS-15MF)は別売りとなっているため、それも忘れず購入します。

ちなみにガラリには自然換気と強制換気の2タイプがあります。自然換気のガラリのほうが手頃なのですが、雨だれや防虫網が付いているため排気の性能が落ちるようで、基本は強制換気のものを選ぶ必要があります。ただうちの環境の場合ブース→即窓排気という超短い距離なのであまり気にせず自然換気のガラリを用意しました。

ダクトとガラリの接続はネロブースの商品ページを見るとスタイロフォームを使った方法が紹介されていますが、スタイロフォーム自体が結構な価格なうえに、ものすごく扱いづらい(カットが難しい、ガラリ用の穴を開けるのもキツイ、廃棄もしづらい)ので、安くて手軽なスチレンボードを代わりに使います。スチレンボードをプラダンで挟んであげれば見た目的にもそこまでみすぼらしいものにはなりません。ただしプラダンとスチレンボードは両面テープでは若干くっつきにくいので、より強力なものを使ったりボルト固定したほうが安定するかもしれません。

ガラリの接続部分が短い場合もあるので、その場合はφ150の接続ニップルを別途用意したほうがいいかもしれません。

あとアルミテープや隙間テープは空気漏れを気軽に塞ぐためには必須です。特に隙間テープは窓周辺に結構使うのでたくさん用意しておいたほうがいいかもしれません。

ちなみにこういうのはホームセンターで買えるのでわざわざネットで買わなくても大丈夫です。
あとはフレームをどうするか考えます。

軽量かつ3kgのファン直置きに耐えられる剛性のあるフレームを作る

フレームは軽さと剛性と両立できるものがよいのですぐにアルミを思い浮かべましたが、アルミでフレームを作るにしてもファンが3kgもあるのでL字のアルミアングルでは脆すぎて恐らく耐えられません。互換ブースと同等サイズで軽量なファンを使うなら全然問題ないんですけどね…

なので今回は縦横12mmのアルミの角パイプを使うことに。

1本1mが760円。考えるのが面倒くさいので、複数本をまとめて購入して半分にカットしてそのままフレームを作っていきます。


写真のものだけでは全然足りないので追加で買ってます

よく考えないと50×50×52cmというとんでもサイズが出来上がってしまうので、もし同じように作りたい人はサイズ調整は適切に行ってくださいね。

ボルトとナットはすべてM4規格を使用。バラ売りのものを最初に100ペアくらいまとめ買いしておくとラク。同じくL字、T字金具などもまとめ買いがおすすめです。

あと、アルミの角パイプを自分でカットしたり穴あけするためにも電動ドリルやジグソー、クランプなどは持っておいたほうがいいですね。ジグソーとかは使い方によってはめちゃくちゃ危険なので扱いには気をつけて下さい。

自分でカット調節できない方は、完全な設計図を作ったうえで必要なアルミ角パイプをホームセンターで購入し、その場でカットしてもらう、というのがラクです。穴あけは自分でやったほうがいいですね。アルミならわざわざ金属用のものを使わずとも木工用のドリルやノコで加工できます。間違ってステンレス材とかを買わないように気をつけましょう

私は一切設計図とかを用意せずにテキトーに作ったのでフレームに歪みや隙間ができましたが、まあそれもDIYの醍醐味です。テキトーにやって要件を満たすものが作れるなら何でもいいです。

というわけで、写真でフレームの組み立てを見てみます。
最初に角パイプを並べてどこをどうつなげればいいかイメージしてみます。

とりあえず四隅をプレートで接続します。プレートは自力で曲げてますが、普通にL字金具使うほうがラクですよ。

上部のフレームができました。

このフレームに足をつけます。

底部にも角パイプを設置。

ボルトのスペースが必要なのでちょっと浮かせます。スペースを作ることでボルトに干渉せず、さらに底面にガラス板とかを敷けるようになるので一石二鳥です。

こんな感じで隙間テープ貼っとけば底部からミストが逃げるのも防げます

次にサイドパネル部分と奥のところに角パイプを設置。

長さの微調整のために角パイプをクランプで固定しジグソーでカットしたりします。アルミなので木工用の刃でも十分切れます。

整流板を設置するための金具の位置を考えます。

一応設置してみましたが、これだとサイドパネル部分に大きな隙間ができてしまうのでなんの意味もありません。

なので、もう少し考えた結果このような配置に落ち着きました。結局互換ブース方式で手前、中央、奥の3箇所で吸い込むようにする形になりましたね。

横から見るとこういう構造です。整流板の設置金具は可動にして、交換したい時すぐ取り出せるようにしてます。いちいちサイドパネル外すの面倒くさいですしね…

そして上部にファン設置用のパイプを取り付け。

試しにファンを乗せてみましたがフレームが歪んだりということも無かったです。やはり角パイプで作って正解でした。

次にファンを固定するためのL字金具を取り付けます。これを付けないと丸形フランジと天板が干渉してダクトを取り付けることができないためです。

当然このままだと隙間だらけなので、100均で買ってきた薄いスチレンボードと隙間テープで内側に囲いを作ります。

んでこれを金具部分に設置。

ファンを乗せてみました。問題なさそうです。

これでフレームは完成です。

フレームとファン・ダクトの据え付け

フレームが完成したら、あとはボルトが干渉する部分のプラダンに穴開けたりファンが入る部分をカットしたり、ファンとダクトをくっつけるだけです。ざっくり取り付けるとこうなりました。

いい感じですね。ファンの排出口はこんな感じです。上でも書いたのですが、ホムセンでスチレンボードを買ってそれをプラダンで挟み込み、ガラリが入る大きさの穴をカッターかなんかで開けてつなぐだけ。なんにも難しいことはないですが、スチレンボードは穴あけしているとゴミがものすごく出てきてあんまり良くないなと感じました…手軽で安いっていうメリットのほうが大きいので個人的には納得しましたけど、人によってはスタイロフォームを使ったほうがいいかもしれませんね。

窓への設置とか詳しいことはツイッターとかで検索したほうが早いかもしれません。

自作塗装ブースの完成

これで完成です。

タミヤのツインファンがすっぽり収まるサイズです。デカすぎですね。

念の為整流板にはレンジフードフィルターを磁石で貼り付けています。意味があるのかどうかは知りません。

なおファンとダクトの距離はこんな感じです。

ダクトは太くて距離が短いほうが強力に排出できます。変に長くしたりすると中間ファンなどを噛ませないと排気力が低下するとかなんとか…なのでファンのダクトがφ150ならそのままの径で排出口に出すほうがよいです。φ150→φ100とかに変換するアダプタ付けたりすると排気能力が一気に下がる可能性があります。あとは、できる限り塗装ブースは窓際に設置するのをおすすめします。

一応騒音値を計測したところ、50dB前後でした。高音域も出ておらずかなり静かです。
なおこれは中風量での測定なので、強、弱の時の数値がどうなのかはわかりません。今後機会があれば測定してみます。

中風量でもかなりの吸引力と排出力があるので、もうこれで十分な気がしていますが…

完成後すぐにテストでクリアをドバーっと高圧で吹いたりしたのですが、吹き返しが全く無いですしシンナー臭も全然残りません。最高です。

これからはこの塗装ブースで頑張っていこうと思います。
あ、ちなみに制作費は大体2万5千円~3万円前後でした。こういうツールをケチると中途半端で使えない産物となる可能性も少なくないため、変なところで手を抜いたりしないほうがよいです。

なお2020/7/20現在は風量強固定(450㎥/h)で使用しています。強と中で切り替え設置できるのですがそれをする意味がない(切り替える必要性がない)ので…結線も面倒くさいですしね。

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